人気ブログランキング | 話題のタグを見る

oblivion日記


by Fastred

第十話 Thieves Arsenal

第十話 Thieves Arsenal_a0108596_14542498.jpg

例の男、バッソからコンタクトがあったのはそれから五日後のこと。帝都周辺で錬金術の材料集めをしていた俺は、急な雨に降られ大学へ急いでいた。
寺院地区に差し掛かったころ、後ろから近づく足音とミスターと呼ぶ甲高い声が近付いてくるのが聞こえた。

第十話 Thieves Arsenal_a0108596_15132537.jpg


「ミスター!またあったね!前のコインさ、仲間にすごい受けがよかったんだ。もう一つコレクションさせておくれよ!」
レッドガードの少年はそう言って足にまとわりつきながら、俺の懐に手紙を押しこむ。いい腕だ。俺でもわずかにしか感じ取れなかった。もっと鈍い連中は彼をぞんざいに扱ったとしても、代わりのものを知らぬ間に懐から持っていかれてしまうことだろう。
俺は懐から金を出すと、彼に差し出す。
彼はコインをつかむと、そのまま駆け出していった。

第十話 Thieves Arsenal_a0108596_15242046.jpg

彼のような子供たちを誰が責められるだろう。彼らには身よりがなく、たった一人で生きているためにああいったことに手を染める。あの少年も10年、いや5年後には俺の同業者としてギルドに所属することになるのかもしれない。




さて手紙の内容だ。
俺は前回渡された馬鹿長い手紙を覚悟し手紙を広げた。

『君に簡単な仕事を与えよう。コロールの東、アッシュ砦に価値のある略奪品があるという情報を得た。知っての通りこの場所はゴブリンが出没すると言われているが、君なら何の問題もなくやつらバカな生き物を出しぬけるだろう。侵入してとってくる、もちろん殺しはなしだ。 バッソ』

今回はずいぶん短い手紙だった。与えられた情報は砦のどこかにあるということだけ。ようするに相手の目を盗んで探しまわるということになる。アッシュ砦と言えば、帝都からコロールへの街道上に位置する砦跡で、かつては関所なりなんなりに使われていたのかも知れないが、現在では内部はゴブリンの巣。外部は追剥達の絶好の待ち伏せ地点となっているのが実情だ。

しかし、ゴブリン相手なら退治してそのあとゆっくり戦利品をいただいて帰った方が楽じゃないか。盗賊ギルドでも、過程で殺してはいけないのは無辜の人々であり、それ以外。つまり魔物や動物、殺人者などは除外されているのだが、バッソの場合はそういった連中、それこそゴブリンやネズミでさえも倒したら報酬を減額と言ってきている。奴がそれほど血が嫌い、と言う線もないわけじゃないが、これほど過剰だと何かにつけ、文句をつけてこちらの報酬を減らそうって
魂胆のようにさえ感じられる。

ともあれ向こうが殺しはなしと言うなら、今回はそれに沿って仕事をしてやるつもりでいた。今回は相手が何であれ、殺しはしない。それでも向こうがケチをつけてくるようなら、こっちもそれなりの対抗手段を講じてやるさ。






第十話 Thieves Arsenal_a0108596_17362119.jpg

次の日の朝。天候はあいにくの曇り空。とはいえアッシュ砦は俺の足なら帝都からでも2時間程度でたどりつける。ついたら室内だし問題はないだろう。

第十話 Thieves Arsenal_a0108596_17434059.jpg

それから二時間後道中には取り立てて何もなく、ちょうど雨が降り出したころ目的地のアッシュ砦に到着した。





仕事上松明を使うわけにもいかないし、俺は暗視の魔法をかけ中に入る。辺りがよく見えるようになったが、世界は色を失った。できれば使いたいもんじゃないんだけど。
第十話 Thieves Arsenal_a0108596_18152637.jpg

砦の中は暗い。俺は魔法の効果で完全に見えているが、実際にはところどころゴブリン達が取り付けたのであろう明かりがあるだけなので、内部のほとんどが暗闇に包まれているだろう。
暗闇は俺にとっては心強い味方になる。

とはいえ一度ゴブリン達に見つかれば、否応なく戦闘になるのは間違いない。そうなれば目的は果たせなくなる。俺は慎重に進んで行った。

第十話 Thieves Arsenal_a0108596_1832510.jpg

曲り角に差し掛かったころ、通路の向こうからゴブリンの声が聞こえた。
こっそりと覗き込むと一匹のゴブリンが見張りに立っていた。暇をもてあましているのだろう、うろうろしては何やらキイキイ漏らしている。

せまい通路だし、無視してやり過ごすのは厳しそうだった。ちょうどいい機会だ、俺は鞄を探りとバッソから手に入れた特殊な道具を取り出した。まずはブラック・ジャック。

俺はブラック・ジャックを手に取りゴブリンが向こうを向いているうちにゆっくりと背後に忍び寄り
第十話 Thieves Arsenal_a0108596_18283449.jpg

ドグッ
第十話 Thieves Arsenal_a0108596_18291642.jpg

いっちょあがり。
殺したのではない。この棍棒には殺傷能力はないが、うまく後ろから忍び寄り、後頭部を強打することにより、相手を気絶させることのできる。もちろん目を覚まされたり、気絶した相手を他の連中に見つかればこちらの存在を教えてしまうことにもなるし、背後から後頭部をという構造上ヒューマノイド以外には効果がない。しかし気絶している時間は割と長く、探索がうまく行けばバレる前に脱出し実用的な道具である。

さてついてに俺は帰りに同じ通路を通ることを考え、明かりを消しておくことにする。通常燃え上がっている炎は武器で風を起こそうが、砂をかけようが早々消すことはできない。そういうときに使えるのが、この水矢だ。
びふぉー
第十話 Thieves Arsenal_a0108596_18485726.jpg

あふたー
第十話 Thieves Arsenal_a0108596_18502235.jpg

矢じりの代わりに水の力を封じ込めたこの矢は一発で大概の火を鎮火することができる。火がむき出しになっているようなものなら、たとえ松明のように油を使った火種でも一撃で消すことのできる強力な魔法がかかっており、闇に溶け込む俺のような職業にとって心強い相棒になってくれそうだった。



さらに奥へ奥へと進み、少し開けた場所にたどりつく。
第十話 Thieves Arsenal_a0108596_18572021.jpg

部屋の真ん中に宝箱があり、同業と思しき人間が死んでいる。宝箱から左手側にシャーマンが二匹と右手にバーサーカーがうろついていた。
第十話 Thieves Arsenal_a0108596_20103784.jpg

俺はしばらく様子を見てみることにした。しばらくするとシャーマンの一匹は扉を開けて広間を出ていき、もう一匹は部屋の奥に進んで行った。
俺はバーサーカーの後ろを抜けると、部屋の右側を静かに進んで行く。
第十話 Thieves Arsenal_a0108596_20162157.jpg

中心部に置いてある宝箱を観察すると、宝箱を囲むように罠が取り付けられているのが見えた。宝箱を開けようと近づけば、四方から矢が降り注ぎハチの巣になる。あそこで死んでいる男は不用意に近づいて犠牲になったのだろう。
低い姿勢で近づいて、宝箱を引きずりだせば開けられるかもしれないが、それをゴブリン達にばれずに成し遂げるのは無理だろう。この状況で戦闘になり一度にシャーマン二匹、バーサーカー付きを相手にして勝てる自信もない。そんなリスクは冒せない。
俺は部屋を見回した。直観で進んできただけだしここにあるとも限らないが、この部屋の厳重な警備から考えれば例の品がここにあってもおかしくはない。本当に中心の宝箱にあるとすれば、一匹ずつ眠らせるか始末しなければいけないことになる。と、部屋の奥に進んで行ったシャーマンに目を向ける。
第十話 Thieves Arsenal_a0108596_2045671.jpg

そいつの目の前にも宝箱があり、それじっと見つめていた。

あの宝箱は臭いな。

中身を確認しようとしばらくまっていたが、ゴブリンは全く動く様子を見せない。
もう一匹のシャーマンが戻ってくれば、さらに動きにくくなる。俺は早く動くことを決めた、やつを眠らして宝箱の中身を確認する。
とはいえ正面から近づくのにブラックジャックは使えない。
俺は背中の矢筒から一本の矢を引き出すと番えた。
正直一本400近くするこの矢を使いたくはなかったが、状況だけに仕方がない。
矢を発射すると着弾点から緑色の煙が立ち上った。

第十話 Thieves Arsenal_a0108596_2058599.jpg

効果は抜群だ。

煙を吸った途端、シャーマンは糸が切れたあやつり人形のように崩れおちる。
『この矢、ガス矢が着弾するとその地点に睡眠効果のあるガスが噴き出す。このガスを吸ったものは眠りに落ちる。肉体的な刺激、攻撃などを受けた場合には覚醒が早まるが、放置すれば数十分から数時間、気を失ったまま目を覚まさない。』
とはバッソの説明の引用だが、まさにその通り。しかもガスなのでほとんど音を立てることもなく、相手を眠らせることができた。値段がはるだけのことはある。
バーサーカーの方に目をやっても全く気づいた様子はなかった。
第十話 Thieves Arsenal_a0108596_21134994.jpg

俺は宝箱に近づく、宝箱にかかった鍵は5か所のヒンジのあるもっとも複雑が鍵だった。

俺は自分の勘が正しかったと思った。ゴブリンは通常こんな難しい鍵は使わないし、使えない。
おそらくはゴブリンに襲われた商人か何かが持っていた宝箱を、開けられないのでそのまま奥にしまいこんだのだろう。
第十話 Thieves Arsenal_a0108596_21215927.jpg

カチャリと言う鍵の開くいい音がして、宝箱の中身が見えた。中には複雑な彫刻が施されたごつい盾がしまわれており、一目で高いものだろうとわかった。
第十話 Thieves Arsenal_a0108596_21374075.jpg

俺はその盾を背中に背負うと、ゆっくりと脱出を図った。

入口も近づいたころ、奥のほうでゴブリンの騒ぐキーキー声が聞こえてきたが、もう手遅れ。お宝はいただいくよ。







俺が盾を持って姿を現すと、バッソはニヤリと笑い
「さすがだな。どうやら殺しもしてないようだ。」
と言った。たしかに俺は何も殺していない、しかしこいつはどうやって俺の行動を知るんだ。

「さすがにいい仕事をしてくれる。報酬を支払おう。2400セプティムでいいかね。」
「2400!?」
俺は驚いた。2000あれば、物価の安いブラヴィルやウォーターフロントであれば一軒家が購入できる。一回の仕事にしては法外だ。

「あんた、その盾をいくらで依頼人に売りつけるつもりなんだ?」

バッソは笑った。
「それは職業上の秘密というものさ。君は私がどうやって『スキングラードの城に忍び込んだんだ?』と尋ねたら教えてくれるとでも言うのかい?」









食えない男だ。大学への帰路につきながら俺は考えていた。
言っていることなどからして、ギルドの関係者なのかもしれない。
こっちは向こうのことさっぱり分かっていないのに、向こうはこっちのことをいろいろ知っているってのもあんま気分のいいもんじゃない。

とはいえ金もいいし、やつの用意する道具は本業にも役に立つだろうこともわかった。向こうがこっちを利用する気ならこっちも利用できるとこはし返してやるさ。













おまけ
今回使うことができなかった油矢、音矢の使い方を紹介する。この二つの矢は名前から予想のつく効果がある。
油矢は床に向けて打つことで油溜りを作ることができる矢。ここに人や生き物が通りかかると、滑って気を失ってしまう。
音矢は着弾地点に大きな音を起こすことで、その地点に敵の注意を誘うことができるもの。
こんな感じに
第十話 Thieves Arsenal_a0108596_1211790.jpg

もちろん存在を相手に知らせることになるため使いどころは難しいが、相手の注意を他に向けている間に、後ろを通りすぎる。見張りを引き離すためなどに使うことが本来の使い方。

が、組み合わせ次第ではいろいろな使い方もできる。

たとえばあらかじめ地面に油矢を使い、油溜りを作る。
第十話 Thieves Arsenal_a0108596_0393968.jpg


音矢を使い、その近くに人を引き付けると
第十話 Thieves Arsenal_a0108596_146364.jpg


第十話 Thieves Arsenal_a0108596_1483656.jpg

こうなる。
by Fastred | 2008-02-28 15:30 | oblivion日記